事務職員の役割

 私たちの事務所には、日常的に裁判所や検察庁からの電話連絡があります。ただし、私が事務所にいる時間は、全業務時間のうちのせいぜい2割程度ですから、連絡の大半は事務職員が受けることになります。事務職員は、電話があったことを連絡帳ファイルに記録し、私は出先から連絡帳を確認することになります。

 ところが、裁判所や検察庁からの電話連絡は、たいてい用件を明らかにせず「折り返し電話ください」というものです。つまり、私自身が折り返さなければ、用件は済みません。そのため、ここ数年は、毎日ではありませんが、事務所用の携帯電話を持ち歩き、出先から折り返しの電話をかけることが増えました。

 さて、私が折り返すと、確かに弁護士でなければ対応できない込み入った用件の場合もあります。しかし、事務職員に伝言してもらえば、私が出先から事務職員に指示し、事務職員が裁判所や検察庁に返事をすれば足りる用件もたくさんあります。例えば、期日調整のこととか、記録謄写の技術的なこととか、定型的な意見照会に関することなどです。そのような用件については、なぜ事務職員に伝言してくれないのだろうかといつも不思議に思います。

 反対に、私たち弁護士が裁判所や検察庁に電話連絡するとき、裁判官や検察官が電話口に出ることは少なく、特に裁判官に直接つながることはほとんどありません。裁判所書記官が対応します。検察官については直接連絡もままありますが、検察事務官だけで済ませることもかなりあります。いずれにしても、裁判官や検察官と直接やり取りしなければならない込み入った用件以外は、裁判所書記官や検察事務官に連絡して済ませるのが通常です。

 私は、法律事務所の事務職員も、裁判所書記官や検察事務官と同等の地位にある職業であると思っています。しかし、裁判所や検察庁から見ると、法律事務所の事務職員は単なる電話番にすぎず、法律用語を使っても分からないだろうという先入観があるように感じます。実際、相手方の法律事務所の事務職員に法律用語を使って簡単な用件を済ませようとしても、おぼつかない場合があります。裁判所や検察庁は、そのような電話番型の事務職員を標準に対応しているのかも知れません。

 私たちの事務所の事務職員は、事件の中味もある程度理解し、定型的な書面は率先して文案を作成してくれます。私たち弁護士への折り返しを希望する旨伝言があった場合、ときに事務職員から積極的に用件を確認するよう指示しておくこともあります。用件によっては、慌ただしくぶっきらぼうな弁護士よりも、言葉遣いが丁寧で根気が良い事務職員が対応したほうが上手くいく場合が多いと思います。

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