勤務弁護士がいない理由

 当事務所は、私と竹内弁護士の2名で、他には事務職員の方がいるだけです。弁護士は他にいません。

 最近では名古屋でも5人、10人、20人という規模の事務所が増え、その内訳は、経営者弁護士(パートナー弁護士と概ね同義のようです)が1人ないし数名、他は勤務弁護士(アソシエイト弁護士と概ね同義のようです)という構成が多いようです。

 弁護士が多数所属することによって、多様な考えがぶつかり合い、活気が生まれ、また、数多くの事件に一度に対応できるなど、スケールメリットは大いにあると思います。私自身、そのような事務所を羨ましく思うこともあります。

 しかし、当事務所は、そのような事務所ではありませんし、今後そのような事務所になる見通しもありません。それは、事務所の性質が異なるからです。

 多数の弁護士が所属する事務所は、内部で事件の担当者を振り分けているのが通常です。外部から見た限りの感想ですが、特定の弁護士にしかできない事件は、その弁護士が担当するしかないのだと思います。しかし、一定の経験を積んだ弁護士であれば誰でもできそうな事件(実際にそのような事件かどうかは別として)は、経営者弁護士が勤務弁護士に担当させることもあるようです。また、ある程度大きな規模の事件については、経営者弁護士の指揮の下、勤務弁護士が実働部隊となって業務を分担することもあるようです。

 しかし、当事務所の場合、最初から担当弁護士を指名する形で依頼を受けることがほとんどです。例えば、私の場合は、刑事事件、農地の事件、竹内弁護士の場合は、離婚、相続、後見といった家事事件、特に外国の方が関係する家事事件です。そのような場合、他の弁護士に任せるわけにはいかず、業務を分担することもなかなか困難です。例外は、外部の信頼できる弁護士と共同で受任するときだけです。なお、例外とはいえ、このような共同受任は多くあります。

 そうすると、仮に当事務所に勤務弁護士がいたとしても、自分で依頼を受けて、それを自分で担当することになり、勤務弁護士側にとっても経営者弁護士側にとっても、あまりメリットがありません。このような事情から、当事務所では、これまで一人も勤務弁護士を採用したことがありません。

 もっとも、在野法曹として、後進の育成は大切な任務だと心得ています。そこで、私は、勤務弁護士としてではなく、外部の後輩弁護士と事件を共同受任したり、研修の講師などを積極的 に担当したりするようにしています。

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