弁護士の会務

弁護士と言えば、民事裁判や刑事裁判の法廷に立っている姿が思い浮かびます。確かに、弁護士にとって、法廷に立って弁論したり証人尋問をしたりすることは大切な仕事の一つです。また、法廷に立つ以外に、依頼者のために相手方と交渉したり、関係者の話を聞きに行ったりすることも、同じように大切な仕事です。これらは基本的に、依頼者から弁護士費用を頂いて、依頼者のために法律問題に取り組む仕事ということができます。

しかし、弁護士には、このような普通の仕事以外に、会務という仕事もあります。会務というのは、弁護士の所属する弁護士会や、全国の弁護士で構成される日本弁護士連合会(日弁連)の活動のことです。弁護士会や日弁連には多くの委員会があって、様々な公益活動を行っています。私の場合、愛知県弁護士会の刑事弁護委員会や会報編集委員会という委員会、日弁連の人権擁護委員会という委員会に所属して、定期的に会合に出席したり、文書を作ったり、発表したり、その他色々な段取りをしたりしています。例えば、刑事弁護委員会では、個々の弁護士が充実した刑事弁護を行うために裁判所や検察庁と折衝したり、弁護士向けの研修を開いたり、マニュアルを作成したりします。会報編集委員会では、弁護士会が毎月発行する会内誌の執筆を誰かに依頼したり自分で執筆したり編集作業をしたりします。人権擁護委員会では、重大な再審事件の弁護活動を支援しています。

ところで、弁護士は、このような会務を無報酬で行っています。会務には、普通の民事弁護や刑事弁護と同じように、かなりの時間と労力が必要とされますが、それでもお金は一切もらいません。その意味で、会務は、弁護士のボランティア精神が強く発揮される分野といえるでしょう。私の場合、だいたい、普通の仕事が3分の2、会務が3分の1くらいの比率です。しかし、週によっては、普通の仕事と会務の比率が逆転することもあります。

弁護士が会務に取り組む理由は色々ありますが、私は、他人の役に立ちたいという意味で、実は普通の仕事と同じ理由ではないかと思っています。それに会務は、弁護士が自分の仕事を広い視点から見つめ直し、他の弁護士の考え方や新しい情報を学び取る絶好の機会です。私も、会務を通じて色々なことを学び、そのことが普段の仕事にも大いに役立っていると思っています。会務を全くやらない弁護士もいます。それも一つの仕事のやり方かも知れません。しかし、私は、普通の仕事に支障を来さない範囲で、どんどん会務をやったほうがいいと思いますし、後輩の弁護士にもそのようにアドバイスしています。

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