ハズレでは済まされない問題

名古屋地裁では、昔から概ね1週間ごとに準抗告を担当する合議体(裁判官3名で構成するグループ)が変わり、いわば当番制になっています。刑事1部から6部まで6つの合議体があるので、1ヶ月半ごとに担当がまわってくることになります。ただし、最近は裁判員裁判の影響で、1、2、3、4、5、6、1と規則的な当番制にはなっていないようです。

以前、このエッセイでも書いたことがありますが、残念ながら、どの合議体にあたるかによって、結論は変わると言わざるを得ません。もちろん、全く同じ事件について同時に別の合議体の判断を求めることはできないので、あくまでも「たら」「れば」の話ではありますが、自分の手持ち事件や仲間同士で報告し合った他人の事件について、申立書レベルまで読んだ上で比較検討すると、当たりとハズレの合議体がくっきりと浮かび上がってきます。

残念ながら、今週はハズレでした。

在宅事件として捜査が進み、取調べにも全て対応し、弁護士指導の下、少しでも証拠隠しを疑われ兼ねない行動も慎んできたにもかかわらず、見せしめ的に逮捕・勾留されたであろう事案について、勾留準抗告申立があっさり棄却されました。しかも、持ち家や妻子も存在し、実刑がおよそ考えにくい事件であるにもかかわらず、逃亡すると疑うに足りる相当な理由まで認定されました。最近はやりの結論しか書かれていない決定だったため、理由はよく分かりません。刑事4部(神田大助裁判長)でした。お隣りの合議体だったらどうなったでしょうか。

気を取り直し、せめて、国際人権規約上も深刻な問題とされている、家族を含む包括的接見等禁止だけでも一部解除し、家族面会を可能にすべく、準抗告を申し立てました。接見等禁止の一部解除の場合、決定をした裁判官に職権発動を促す方法と、準抗告を申し立てる方法の2つがあり、実務上どちらもよく使われています。私は、接見等禁止決定を出した当の裁判官に対する「お願いベース」の職権発動を促す方法より、第三者的判断が得られて理由も多少は明確になる後者(準抗告による方法)の方を好んで用いますが、問題は、たまに後者を頑なに拒否する合議体があるということです。そして、今回、たまたまその拒否する合議体に当たってしまったのです。同じ週の申立だったので、こちらも神田大助裁判長です。

準抗告を申し立てた後、しばらくして陪席(庄司真人裁判官)から電話がありました。明らかにとまどっている様子で、私に対し、なぜ準抗告なのかと繰り返し尋ねます。私はひと通り議論状況を伝えましたが、どうも噛み合いません。こんなことで不毛な議論を重ねて徒に時間が経過すれば、家族接見を望んでいる依頼者のためになりません。私は、これではダメだと思い、何でもいいから早く結論を出して次に行かせてくださいと述べました。そうしたところ、案の定、的外れな棄却決定が来ました。私は、包括的接見等禁止の一部の違法性を認めて部分的に決定を変更することは理論的に当然可能だと思っていますが、決定には結論しか書かれていないので、なぜダメだったのかは全く分かりません。棄却決定を受け、直ちに職権発動を促す申立をしたところ、接見等禁止決定をした裁判官自身によって、即座に申立は認められましたが(それなら最初から家族を接見等禁止から除外すればよいのに、と言いたい。)、いずれにせよ半日のロスとなりました。

ユーザーが裁判官を選べないのは、事の性質上、仕方ないことかも知れません。選べるようになれば、一部の裁判官に事件が集中することが目に見えているからです。民間企業とは違って国家権力を行使する場面でそれはさすがにまずかろうと私でも思います。一歩間違えるとポピュリズムが蔓延する危険もあります。

しかし、それにしても、裁判官によって判断が理不尽に分かれるというのは、ユーザーとして許容し難いものがあります。常に一刻を争っている身体拘束の問題です。
今週はハズレだった、残念、では済まされません。こういうことが続くと、早くAI裁判官に登場いただけないものか、と本気で思います。

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