法曹人口問題(2)

 7月に、私は、弁護士の数を急激に増やし過ぎたため、弁護士の就職難が発生し、十分なトレーニングを積む機会を得られない弁護士が多くなっているという記事を書きました。

 法曹人口問題(1)

 これに対しては、「自由競争なのだから仕方ない。能力のない弁護士が淘汰されていくだけなのだから構わないではないか。」という意見があります。確かに、お金をつぎ込んで法科大学院に入り、司法試験にも合格したのだから、その後の生活を保障してほしいというのは甘い考えでしょう。弁護士になった地点がゴールではなく、そこからがスタートです。実際の仕事をやりながら経験を積み、人に信頼されて、苦労しながら仕事をやりとげ、その結果、おかげさまで生活も成り立っているというのが本来の弁護士のあり方だと思います。

 しかし、弁護士の取り扱う業務は、例えば、商品を作ったり売ったりとか、あるいはレッスンやエンターテイメントを提供するといった、日常的に分かりやすいサービスではありません。複雑な法律問題をどのような手段で解決するのか、日常生活の中でそのような問題に遭遇することは少ないと思います。ですから、通常は圧倒的に、弁護士の方が依頼者よりも、その問題について自信を持っており、強い発言力があります。つまり、サービスを受ける側(依頼者)とサービスを提供する側(弁護士)の力関係は歴然としています。

 このような場合、もし、弁護士が、自由競争に勝ち抜くため、依頼者の利益よりも自分の利益を優先したらどうなるでしょうか。粗悪な商品を買ってしまったとか、役に立たないレッスンを受けてしまったという場合であれば、その店や教室は流行らなくなるでしょうから、まさに自然淘汰されると思います。しかし、法律問題について圧倒的優位に立つ弁護士が、このような不正を働けば、おそらく、依頼者は、そのような弁護士の意図すら、なかなか見抜けないと思います。中には、そのような弁護士の不正が明らかになり、懲戒問題などに発展することもあるかも知れません。しかし、法律問題の場合、なかなか顧客からのチェックが難しいと思います。つまり、問題のある弁護士が繁盛するということは、他の分野に比べて、大いにあり得ることだと思います。

 私は、弁護士の仕事は自由競争になじまないけれども、その代わり、弁護士には弁護士同士によるチェックが有効に機能していると思います。つまり、本来は商売敵であるはずの他の弁護士を弁護士会全体で育成し、同業者のつながりを大切にしながら、正しい仕事についての共通認識を高めていくということです。そして、不正を働いた同業者に対しては、懲戒処分を適用して不正を正します。このようなチェック機能が、ひいては弁護士自治を守ることにもつながっているのだと思います。

 しかし、このようなチェック機能を生かすには、その集団が、お互いの顔が見える適度な規模でなければなりません。あまり急激に集団が大きくなると、誰が誰だか分からなくなるからです。東京や大阪では、既にそのような状態になっていると聞きます。近い将来、愛知県もそうなるでしょう。ですから、私は、弁護士人口を増やすにしても、徐々に増やしていった方がよいと思うのです。

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法曹人口問題(1)

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