裁判員制度(2)

先日、愛知県弁護士会で、裁判員制度についてのアンケートが行われました。アンケートの対象者は愛知県の弁護士1171人です。集計によれば、アンケートに回答した弁護士は176人で、弁護士全体の約15%でした。そして、このうち裁判員制度に賛成と答えた人が48人(約27%)、反対と答えた人が115人(約65%)になりました。反対のほうがかなり多いという結果でした。

私は、殺人事件など裁判員制度の対象とされる重大事件の刑事弁護を引き受ける機会が多いせいか、色々なところで裁判員制度についてどう思うかと聞かれます。そのようなとき、私は複雑な思いを持ちながら、最近では次のように答えています。

「今のまま裁判員制度を始めるのは非常に危険ですが、だからと言って、これまで行われてきた裁判官だけの裁判に逆戻りするのは、もっと危険だと思います。ですから、何点かの重大な問題の改善を求めつつ、最終的には裁判員制度を受け容れるべきではないでしょうか。」

私の考える裁判員制度の問題点は、①対象となる事件が刑の重い凶悪事件(死刑も含まれる)に限定されること、②裁判員が「やったかやらなかったか」だけでなく刑の重さまで決めること、③裁判員が自分の体験したことを外部に一切漏らしてはならないことなどです。①については、もっと身近で軽い事件から始めるべきだと思いますし、②については、刑の重さというのは裁判官が他の事件とのバランスを考えながら公平に決めるものだと思うからです。また、③については、裁判という貴重な体験をした人が、自分の意見をどんどん言えるようにしたほうが良いと思います(さすがに事件の関係者の個人名を公開することは許されないと思います)。

しかし、このような問題を抱えながらも、私はやはり一般の人に刑事裁判に参加してほしいと思います。裁判に参加してもらい、裁判が今どうなっているかを一緒に見てもらい、これからどうすればよいのかを一緒に考えてほしいのです。それは、今の刑事裁判の多くが、あまりにも「絶望的」で、さすがに一般の人も、これを見れば、このままではいけないと思うと信じているからです。ですから、政治的な妥協の産物かも知れませんが、今の中途半端な裁判員制度でも、これを始めることによって、今の刑事裁判の問題点がだいぶ「改善」されるのではないかと期待するわけです。

では、一体、今の刑事裁判のどこが「絶望的」で、どのように「改善」されるべきだと考えるのでしょうか。この点については、また後日、書いてみたいと思います。

【関連エッセイ】
裁判員制度(1)

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