取扱い件数についての雑感

 ここ2、3年は、毎日どこかで接見し、毎週どこかで整理手続をやり、毎月何度も公判に出頭し、ずいぶん刑事事件の取扱い件数が増えたものだと思っていました。ところが、勾留されている事件の件数を数えてみると、わずか8件です。これと同数程度の勾留されていない事件があるとはいえ、それでも合わせて20件未満です。

 そうすると、単純に取扱い件数で比較すれば、民事事件の件数のほうが多いことになります。しかし、取扱件数と稼働時間は必ずしも比例するものではなく、再審弁護団や日弁連の委員会活動を合わせれば、私の場合、全稼働時間のうち刑事事件に費やす比率は8割以上になるはずです。

 このように刑事事件に費やす時間が多くなる原因は、民事事件に比べ、事務職員に任せられる部分が少なく、弁護士自身で動かなければならない部分が多いことにあると思います。ここ数年で、私たちの事務所の事務職員は、刑事事件の記録謄写や記録整理、定型的な書面の作成、書類の授受等に慣れ、逐一指示しなくても的確に事務処理を進めてくれるようになりました。これだけでも非常に助かっています。しかし、接見や、内容面の電話連絡、現地調査、実験等は、どうしても弁護士が対応しなければなりません。それ以外にも、想定外の出来事がたびたび発生しますので、その都度、弁護士が対応することになります。成年後見業務や破産管財業務の事務作業のほとんどを事務職員が担当するのとは正反対です。

 刑事事件の場合、仕事の性質上致し方ないとはいえ、もう少し効率を考えなければ、これ以上、手持ち件数を増やすことは物理的に困難となります。民事事件と同様、仕事の効率化を真剣に考えなければならない時期に来ていることを実感します。

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