費用の設定〜我々の立場から

 弁護士業界で約18年、独立してから約13年になりますが、今でも悩ましいのは、弁護士費用の設定です。当事務所では、ウェブサイト上で報酬基準を明記し、原則としてこれに沿って運用しています。とはいえ、報酬基準は、あらゆるタイプの事件を網羅しているわけではありませんし、一見、典型的に見える事件であっても、解決すべき問題や難易度はそれぞれ異なります。どれ一つとして全く同じ事件などありませんから、結局、個々の事件ごとに費用を見積もる必要があります(なお、正式な見積書は作らず、口頭でよく説明した上、委任契約書を作成することもよくあります。)。

 幸い、この業界での年数が長くなるにつれ、自信を持って費用を請求するようになりました。その際、過去の同等規模の事件が参考になります。あのときの報酬設定が適切だったかどうかを思い出し、加筆修正すべき点を見つけ出します。過去の依頼と比べ、法令、運用、弁護技術等が変わったことにより、どれだけ時間的コストが増減するかを考慮します。これを繰り返し情報が蓄積されていくと、自分自身も適切な報酬を設定したという自信を持ちますので、結果的に堂々と費用を説明することができます。

 それでも、想定外の事態が発生し、当初の報酬設定が実態にそぐわなくなる場合があります。一定程度以下の齟齬であれば、気にせずそのまま進めますが、見過ごすわけにはいかないレベルに達する場合があります。そのような場合には、依頼者に実情を説明し、報酬設定の見直しを求めます。それまでの弁護活動を肯定的に受け止めている依頼者であれば、快く見直しに応じていただけます。過去に数回、このような事態が発生しましたが、幸い、いずれの依頼者についても、報酬の見直しについて理解を得ることができました。

 もう一つ、こちらが提示した弁護士費用を高いとおっしゃる方もいます。このような場合、なぜ高いと思ったのかを直接確認し、見直しが可能であれば見直すこともあります。建設業界におけるVE提案と似ていなくもありません。しかし、弁護士費用について根本的な疑問をお持ちになり、私たちが想定する業務量に見合わない低い費用を想定されている方もいらっしゃいます。そのような場合も、可能な限り、業務量と費用との関係を丁寧に説明します。しかし、それでも納得が得られない場合には、残念ながらご縁がなかったものとして、契約せずに終了となります。

 常日頃、費用について、すっきり納得の上、弁護活動を進めたいと考えていますので、どうぞ遠慮なく、弁護士費用に関する忌憚のない意見を述べていただきたいと思います。

目次