名張毒ぶどう酒事件第8次異議審決定

 名古屋高等裁判所刑事第2部は、本日、名張毒ぶどう酒事件の第8次再審請求の異議審について、再審開始を認めない決定を出しました。

 この事件については、昨年5月に、名古屋高裁刑事第1部が、第8次再審請求で弁護団が提出した新証拠は第7次再審請求の最終段階で提出されたものであるから、同一の理由によって再審請求できないとした刑事訴訟法447条2項に違反し、請求は認められないという決定を出しました。今回の刑事第2部の決定は、これを追認するだけのもので、特に注目するほどの内容ではありませんでした。

 今回の決定について敢えて気になった点を指摘するとすれば、第7次再審請求の最終段階で提出された証拠を最高裁判所がどのように取り扱ったのかという点について、ずいぶんと都合の良い解釈を展開していたことです。その証拠を最高裁判所の裁判官が実質的に検討したかどうかは、当時の最高裁決定を読んでも何も書かれていません。ところが、今回の決定は、この点について、あれこれと思いを巡らした結果、検討しなかったとはいえないと結論づけています。

 裁判官がある事件についてどのようなことを考えたのかを知る手がかりは、判決文(決定文)しかありません。もちろん、私も、弁護士の仕事を通じて、様々な判決文を受け取り、その判決について様々な感想を持つことはあります。判決文には書かれていないけれども、きっと裁判官はこのように考えたのだろうと裏の事情を推察することもあります。しかし、正式な文章としてそのような推察を表明することは通常考えられません。法律家の見解は、その法律家が作成した文章のみで判断されるべきだからです。このことは法律家がわきまえるべき最低限のルールだと私は思います。

 この点について、今回の決定は、昨年の決定を救済しようとする余り、書き過ぎてしまったようにみえます。今回の名古屋高等裁判所刑事第2部の決定は、無辜の救済という再審の理念を忘れ、刑事訴訟法447条2項の形式論に陥った挙句、法律家としての最低限のルールさえも踏み外したと言わざるを得ません。このような不当決定は、必ず見直されなければなりません。

【関連エッセイ】
名張毒ぶどう酒事件と証拠開示
名張毒ぶどう酒事件第8次請求審決定
名張毒ぶどう酒事件第7次最高裁決定

目次