時間を守ること

 約束の時間を守ることは、社会人としての基本的なルールです。このことに異論はないと思います。もちろん、人間のやることですから、100%完璧にというわけにはいかないでしょう。途中で予期しない事故に巻き込まれたり、何かの手違いで時間を勘違いしていたということもあります。偉そうな前置きを書いておきながら、私自身にも、時間を守らなかったという心当たりがあります。

 

 しかし、それでも約束の時間を大体いつも守る人と守らない人は、はっきり分かれるように思います。そして、弁護士の業界は、残念ながら時間を守らない人が多い業界だと思います。弁護士のスケジュールは、大きく分けて、①法廷、②書面の提出期限、③会議に分けることができます。このうち、①法廷と②書面の提出期限については、ほとんどの弁護士がきちんと時間を守っているように思います。依頼者の利益・不利益に関わることですから、これは当然のことです。ただし、②書面の提出期限は、何らかの事情で少し遅れるということもよくあります。ところが、③会議については、特に弁護士会で行う委員会などは、定刻に始まることの方が少ないほど、時間を守らない人が多いのが実情です。ひどいときには、定刻どおり会議室に行っても誰もおらず、30分くらいしてパラパラと集まってくるといったこともあります。

 

 正しくは時間を「守らない」のではなく「守れない」というべきかも知れません。さすがに、わざと時間を守らない人はいないでしょう。私自身の経験で言えば、その要因は、スケジュールが詰まっていて前の予定が押してしまった、出かける直前に対応の難しい電話がかかってきた、といったところでしょうか。弁護士の仕事は、決められたとおりに進める流れ作業ではなく、様々な個性を持つ人を相手にする手作業ですから、なかなか予測どおりにはいかないものです。もともと几帳面な人が多い業界であるにもかかわらず、意外と時間を守らない人が多いのは、日々の仕事を通じて何となく分かる気もします。

 

 しかし、やはり他人の信頼を得て社会で生きていくためには、時間はきちんと守るべきです。この際、時間を「守れない」理由は関係ありません。時間を「守れない」せいで、他人の時間を無駄に使わせる、迷惑をかけるという結果が重要なのです。弁護士の場合も、少なくとも①法廷はきちんと時間を守っているのですから、他の時間も守れるはずです。私の知っている弁護士で、毎日もの凄く忙しいにもかかわらず、必ず時間を守る人がいます。その人は「会議も法廷も全く同じ気持ちで臨んでいる」と言います。

 

 最近、私自身も2、3年前に比べると忙しく、時間に追われて対応することが多くなっているので、自分に対する戒めのつもりで書いてみました。

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