接見希望

 拘置所や警察署に身体拘束されている被疑者・被告人から接見希望の連絡がくることがあります。拘置所の場合は事務所宛に手紙か電報が来て、警察署の場合は留置管理係の警察官から電話連絡が来ます。

 もともと予定していた接見であれば何の問題もないのですが、予定外の急な接見希望の場合、たいていスケジュールは混乱します。特に2、3日先まで予定が詰まっていてどうしても接見時間を確保することができないときには、他の依頼者の方にお願いして打合せ時間を変更したり、出席予定だった会合をキャンセルしたりします。遠方に拘束されている被疑者・被告人の場合には、往復の移動時間も考えなければならないため、接見時間が早朝や深夜に及ぶこともあります。

 さて、そうやって、必死の思いでスケジュール調整して接見に行くのですが、弁護人から見て、およそ大した用件ではない場合が少なくありません。例えば、同じ部屋の人にこんなことを言われて心配になったとか(でたらめな話が多いです)、事件に関係のない誰々に連絡をしてほしいとか(しかも連絡して先方に何かを求めるという話ではありません)、そういった緊急性に乏しい用件です。そのような場合、本人の面前では表情に出さないように気をつけているつもりですが、内心、落胆の程度は大きいものがあり、結果的にその落胆ぶりは本人に伝わってしまいます。

 しかし、こういった空振り接見もありますが、他方で、捜査機関が違法・不当な取調べを続けているとか、依頼者が重要なことを思い出し証拠保全の必要があるとか、健康状態が悪化したといった、まさに重要な用件の場合もあります。従って、このような接見希望があった場合には、用件に心当たりがなくても、とりあえず行ってみるという姿勢が大切です。接見希望の電話連絡を受ける際、警察官に電話口で接見希望の理由をあれこれ尋ねるのは、秘密交通の観点からNGでしょう。

 それでも、どう考えても緊急性があるとは思えないのに、毎日のように接見希望を出す依頼者もいます。単なる本人の性格の問題ではなく、中には精神障害が原因ではないかと思われるケースもあります。そのような場合には、できるだけ手紙でやり取りするように誘導しながら切り替えていきます。

 私の場合、接見が終了するとき、原則として次回いつ接見に来るのかを明確に伝えるように心がけています(例外は、検察官や裁判所からの動きがないと、次の弁護活動に駒を進められない場合です。)。次回の接見日を伝えておくと、自分のスケジュールも窮屈になりますが、被疑者・被告人は先が見えて安心するようです。その安心感は、重要とは思えない接見希望を減らすことにつながりますし、「とりあえず次の接見まで」と短期的な目標を設定することで、黙秘権行使の実効性を高めることにもつながり、メリットは大きいと思います。

目次