しきたりとこだわり

 弁護士業界には、色々と古いしきたりがあります。

 弁護士同士を「先生」と呼び合うのも、しきたりの一つといえます。私自身は、実際に教えを乞うた師匠(学生時代の恩師とか勤務弁護士時代の経営者弁護士(いわゆるボス弁))以外、極力、同業者を先生とは言わないようにしてきました。しかし、自分より大幅にキャリアの長い弁護士に対しては、やはり「先生」と呼ぶことが多くなります。しきたりとこだわりの限界事例といえるかも知れません。

 「上申書」もしきたりの一つです。「上申書」とは、主に裁判所に提出する不定型の要望を内容とする文書を指します。しかし、よくよく考えてみれば、「上申書」というのは、僭越ながらお上にひと言申し上げたいという意味合いの文書です。この点、裁判所が、在野法曹である弁護士に対し、「上申書を提出してください」というのは、官尊民卑の思想の現れではないかと思います。私自身は、裁判所に提出する書面に「上申書」という表題を付すことはなく、「申入書」とか「意見書」といった表題を選ぶようにしています。

 気にしない人にとっては些細なことかも知れませんが、合理性がないと思われる古いしきたりは、積極的に変えていったほうが良いと思っています。

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