リノ(その3)

リノでは、子どもに関わる案件を取り扱う裁判所を訪問しました。日本の家庭裁判所のイメージです。

まず、裁判所の法廷で、親権停止の裁判を傍聴した後、裁判官が時間をとってくださり、お話をすることができました。

法廷傍聴したのは、薬物中毒の両親から出生した幼い子どもについて、州検察官から親権停止の申し立てがなされた事案です。CPS(日本でいう児童相談所です)が、両親の子どもに対するネグレクトについて証言し、親権停止が決定されました。両親は、裁判所の呼び出しに応じず、不出頭でした。

ネヴァダ州は、州の予算が潤沢とは言えず、また、薬物、アルコール、低賃金や教育水準の問題を抱えています。foster careといって、アメリカでは里親制度が発達しているのですが、虐待が原因で親から引き離され、里親に保護されている子どもの数が、ネヴァダ州は全米の平均を超えています。

裁判官とお話しした後、裁判所内のfamily service divisionを訪問しました。これは、⑴調停(mediation)、⑵ファミリーピースセンター、⑶CASA、⑷TPOの4つの部門で構成されています。

裁判所に申し立てられた事件について、調停による解決が適していれば、裁判官により⑴の調停に付されます。調停案件の70パーセントは、1回のセッションで解決に至っているのだそうです。

⑵は、ドメスティックバイオレンス、離婚、虐待といった裁判継続中の事案について、親子の面会をサポートし、また、親子関係の調査を担当する部門です。面会交流をする部屋は、子どもが喜びそうな可愛らしい絵が描かれ、温かい雰囲気でした。面会交流時には、2人のモニターがソファに座って同席します。モニターは、子の安全を確保するとともに、親子の会話や遊び方、親が子に与えている食事、身体的接触の様子などを観察して、裁判官に報告します。面会交流の時間は1時間~1時間半のようです。

⑶は、裁判官が指名したボランティアであるCASA(court appointed special advocates)が、里親のもとにいる子どもたちをサポートする取り組みです。1人のCASAが、1人の子どもを担当します。CASAには、会社を退職した方や、元教師などが多いとのことでした。CASAは、1ヶ月に1回以上は子どもと面会して信頼関係を築き、全ての記録を確認し、手続きにも同席します。CASAは、裁判官の耳であり、目であって、子どもの状況について、裁判官に中立、客観的な意見を述べることを期待されています。もっとも、里親のもとにある子どもの数に対し、CASAの数が圧倒的に不足しているため、必要性の高い子どもから順番にCASAを選任せざるをえないようです。

⑷は、temporary protective orderといって、ドメスティックバイオレンスについて、接近禁止などの一時命令を出す部門です。

リノでは、地域の深刻な問題と向き合いながら、子どもの成長を見守る試みが行われていました。

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