弁護士会の活動を見渡して

 弁護士会の副会長になって約半年が経過しました。任期は1年ですから、ほぼ半分終わったことになります。本当にあっという間です。最初の2ヶ月間は慣れることに精一杯でしたが、最近ようやく落ち着いて弁護士会を見渡すことができるようになりました。

 副会長をやって実感するのは、弁護士会は、実に様々な法律の分野に関わっているということです。私自身は、刑事弁護の分野を中心に弁護士会の活動に関わってきましたが、会全体の活動の中では、ほんの一部にすぎません。まだまだ狭い世界をにとどまっていたと痛感します。

例えば、高齢者・障害者支援の分野では、弁護士会は、様々な市町村や福祉関係の団体と連携しながら、この問題に取り組んできたことが分かります。高齢者に対する虐待が認められる事例、精神疾患が深刻な事例、高齢者をめぐる親族間の対立が激しい事例など、非常に難しい事例がありますが、そのような事例について、嫌な顔一つせずに黙々と仕事に取り組む弁護士がいます。また、子どもの権利を守るという理想を掲げ、文字通り身体を張って子どもの虐待の防止に取り組んだり、いじめを防止するために学校に足を運んで自ら講義をしたりする弁護士もいます。さらに、受刑者の処遇に関する問題を中心に、長年、人権侵犯救済申立事件に携わってきた弁護士もいます。このような世間的にあまり脚光を浴びない分野にコツコツと取り組んでいる弁護士は、他の分野にも多くいます。

 弁護士が他の業種と大きく異なるのは、職業的な使命・誇りを持って、このような活動を続けてきたことではないかと思います。もちろん、現代社会は非常に複雑で、価値観も多様です。独りよがりな正義を振りかざすことには、必ずしも共感できません。しかし、弁護士法1条の掲げる基本的人権の擁護と社会正義の実現は、決してきれいごとではなく、個々の弁護士が自分なりの正義感を持って、それを実現するための指針になっていると思います。

 あと約半年、副会長として弁護士の人権擁護活動をバックアップしていきたいと思います。

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