不貞行為慰謝料

日本加除出版株式会社の「家庭の法と裁判」という雑誌は、家事事件を取り扱う弁護士にとって、興味ある記事が掲載されています。2015年の創刊当時は、紹介されている判例も特集も物足りないように感じたのですが、次第に充実してきました。

最新号(12号)では、先日紹介したハーグ条約実施法に基づく終局決定例の傾向のほか、養育費の現状分析や、不貞行為慰謝料の裁判例を分析した論稿が掲載されています。

不貞行為慰謝料の裁判例分析によれば、平成27年10月から平成28年9月までの1年間に東京地裁で言い渡された不貞行為慰謝料に関する裁判例は123件あり、そのうち、不貞行為当時に婚姻関係が破綻していたかどうかが争点になった事例は60件であるそうです。

不貞行為当時に婚姻関係が破綻していたとなれば、特段の事情がない限り、不法行為責任は生じません(最高裁平成8年3月26日判決)。つまり、慰謝料は認められません。上記60件のうち、婚姻関係の破綻を認めて不法行為責任の成立を否定したのは6件、全体の10パーセントであったそうです。

この論稿は、弁護士の執筆によるものであって、調査対象とした事例が一覧表にされているとともに、事例の特徴、証拠と認定との関係について詳細に分析されています。

どのような事件でもそうですが、具体的案件を取り扱う場合、過去の裁判例を調査することが重要ですから、このような分析は大変参考になります。