約20年を経て、成年後見制度が見直されようとしています。
その一つとして、成年被後見人等の資格制限(いわゆる欠格条項)の撤廃が検討されています。現在、180程度の法律において、成年被後見人等に関し、欠格条項その他権利の制限に係る措置が設けられているそうです。例えば、公務員、士業、法人役員、営業許可などです。
この議論は、多様な資格や職種、業務等に求められる能力と、民法上の財産管理能力との間には質的なずれがあるのではないかという疑問や、成年後見人等が一律に資格や業務から排除されることで能力を発揮する機会が失われる、欠格条項の存在により成年後見制度の利用を躊躇する影響が生じているのではないか、といった問題意識に由来します。もっとも、欠格条項を削除するとなると、監督方法や代替措置といった関連制度を整備する必要があります。
今年1月10日には、成年後見制度の利用に伴い、警備業法の欠格条項で約10年間務めた警備会社を退職せざるを得なくなった岐阜県の30代の男性が、職業選択の自由を保障した憲法に違反するとして、国に100万円の損害賠償を求めて岐阜地裁に提訴したという報道もありました。このような事案で国に賠償を求めるケースは全国で初めてであるようです。
現在、法制審議会会社法法制(企業統治関係)部会において、会社法改正について審議が行われていますが、会社法においても、「成年被後見人等が取締役、監査役、執行役及び清算人となることができない旨を定める規定を削除する場合において、これに伴って要する規律の整備についてどのように考えるか」という同様の議論がなされています(第10回法制審議会会社法法制(企業統治関係)部会)。
法務省HPで公開されている上記部会の資料によれば、具体的には、就任承諾や職務の執行の取消し、会社法上の責任の免責、心身の故障により職務を執行することができないと認められる者を取締役等の候補者とする議案を提案することの可否等が検討されていました。
今後、様々な側面から、議論が進められるであろう課題です。