本日、ハーグ条約に基づく子の返還請求事件に関連して、最高裁第1小法廷が3月5日に審問を開くことを決めたという報道がありました。
詳細は分かりませんが、ハーグ条約に基づく返還命令が実現しなかった子どもについて、被拘束者であるとして申し立てた人身保護請求事件の上告審と思われます。人身保護請求事件を申し立てたのは、米国在住の父親です。
人身保護請求事件の第一審の名古屋高裁金沢支部が、ハーグ条約に基づき返還を命じた決定とは異なり、子どもの引き渡しを認めなかったことから、その判断を不服として最高裁に上告されたのでしょう。
人身保護請求事件は、他の事件に優先して迅速性が求められる裁判であり、被拘束者に国選代理人として弁護士が選任されるなど、特殊な手続きです。また、裁判所の判断がなされれば、被拘束者は、確実に拘束者から請求者に引き渡されます。私は、国選代理人の立場で、何度か人身保護請求事件を経験しました。
ハーグ条約案件は、もともと人身保護請求手続を予定していたわけではありません。しかし、ハーグ条約実施法に基づく執行手続きが実現できなかった案件について、利用されるようになりました。そもそも、そこに本質的な歪みがあるのかもしれません。
ハーグ条約については、昨年12月にも、最高裁判所において、事情変更を理由に不返還を認めた案件がありました。人身保護請求事件とハーグ条約実施法との関係について、今回の最高裁判所の判断に注目したいです。