親権か、親の責務か

弁護士会の仕事で、数日間ではありますが、来月、イギリスに行くことになりました。子どもをめぐる事件に関し、現地の法律事務所や調停機関の方にインタビューをする予定です。

せっかくの機会なので、イギリスの婚姻法や子ども法の概要を調べています。イギリス法においては、日本の民法における「親権」は、「親の責務=Parental Responsibility」と位置付けられています。過去には、「親の権利と義務」「権力と義務」「権利と権限」という用語が各法に混在していたようですが、1989年子ども法により、新たに「親の責務=Parental Responsibility」という概念が導入され、それに統一されました。

これは、従来の子に対する親の「権利」から子に対する親の「責任」へと比重を積極的に移行させることを意図して規定されたものであるそうです(H26.12 一般財団法人比較法研究センター「各国の離婚後の親権制度に関する調査報告研究業務報告書」55頁以下、田巻帝子氏「イギリス(イングランド及びウェールズ)における離婚後の親権制度」より)。

日本も、「親権」ではなく、「親の責務」とか「親責任」といった用語に変更してはどうかと思います。「権利」として位置付けるから、親権をとったとか、とらないとか、親権を奪われる、といったような、親同士が争う表現になってしまうのです。

子に対する「責務」とか「責任」と位置付けるのであれば、同居親にも自覚が生じ、例えば面会交流に対する意識が変わるかもしれない。他方、別居親には同居親を尊重する気持ちが自然に生じ、養育費に対する意識が変わるかもしれない、と思うのです。