外務省での講演会(子の連れ去り)

今日は東京に出張し、午後の早い時間は外務省で行われた講演会に参加しました。

オーストラリア国際社会事業団(ISSA)の法務部長であるアン・ウォールナー博士による「親による国際的な子の連れ去り」という講演です。ウォールナー博士は、児童心理学の専門家であり、弁護士でもあります。オーストラリア国際社会事業団(ISSA)は、International Social Service(ISS)の支部の一つです、

International Social Service(ISS)は、1924年、家族や子どもの福祉を守るために設立された機関です。ました。2カ国以上の連携がないと解決できない問題(ケースワーク)を扱い、また、国連子どもの権利条約およびハーグ条約に基づいた子どもの権利保護を実現するために各国政府機関に対して提言活動(アドボカシーワーク)を行っています。本部はジュネーブにあり、日本も含め15支部あります。

本日の講演は、連れ去りの当事者である子ども、連れ去った親、連れ去られた親に生じる不安や怒り、罪悪感といった悪影響と、それらを予防・解決するために、どのようなサービスを提供すべきであるのかについて、ホリスティックな視点から語られました。

オーストラリアに居住する外国人親の割合(44.9%)の比率や、オーストラリアにおけるハーグ案件の申請数(140件、子の数では225人とのこと)の多さにも驚きましたが、子の連れ去り事案の予防・解決には、法務+教育+社会福祉+調停といった多面的なサービスを提供することが必要であって、実際にISSAがそのような活動を行っていることが印象に残りました。

親子をめぐる案件について、裁判(判決、決定や命令)ではなく、ADRによる解決の可能性に,私は個人的に期待しています。裁判所が大きな組織であるがゆえに、人的・物的態勢を整備するのが難しいのであれば、ADRの方が余程望ましいと思うのです。そして、ADRには裁判所のように司法権力の裏付けがありませんので、その代わりに複数の分野の専門家が多面的に関わることによって、当事者の信頼を得ることが、有効に機能するために必要だと思うのです。

弁護士登録をして17年経ち、あとどれだけ私に働ける時間が残されているのか分かりませんが、残された時間、そのような仕事にもっと関わることができたらと思っています。