別居期間と離婚

不貞行為(民法770条1項1号)や悪意の遺棄(同項2号)といった離婚原因がない場合、どのくらい別居していれば「婚姻を継続し難い重大な事由がある」(同項5号)として離婚が認められるのか、という問題があります。

離婚が認められる別居期間を具体的に定めた法律はありません。したがって、明確に回答することが難しい問題ですが、「5年以上」とする意見が多かったのではないかと思います。もっとも、最近は3年程度で離婚が認められたという話を聞くこともあります。私の感覚としても、それなりの理由があれば、別居2、3年経過したあたりで、裁判手続を検討する範囲に入ってくるように思います(なお、離婚を請求する側が有責配偶者である場合は除きます)。

最新の判例タイムズNo.1432には、同居期間約10年、別居期間4年10か月で離婚を認めた事案が掲載されています(東京高裁平成28年5月25日判決)。原審は、別居期間3年5か月は短いとして妻からの離婚請求(妻は、夫の暴言・暴力やモラハラを主張しました)を棄却したのですが、控訴審である東京高裁は、別居期間4年10か月は長く(「別居期間の長さは、それ自体として、婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえる」と述べられています。)、別居後の夫の行動(婚姻費用を支払わない等)には婚姻関係の修復に向けた意思を有していることに疑念を抱かせる事情が認められるとして、離婚請求を認容したのです。

今後の参考になる判例の一つだと思います。