飼主に対する損害賠償請求

飼主に対し、犬の鳴き声に対する損害賠償請求を認めた判例が、新しい判例時報(No.2301,大阪地判H27.12.11) に掲載されていました。

ありそうでいて、あまり掲載されることのない判例だと思います。私も、同様の事案を取り扱ったことがありますが、判決に至る前に和解で解決しました。

このような事案では、犬の鳴き声の大きさや頻度が受忍限度を超えていたかどうかの判断になります。上記判例では、録音された証拠により一定dbを超える鳴き声の音量が計測されたことや、原告が抑うつ状態になった経過があること、飼主が対処していないと認定されたことが、損害賠償を認める要因になったものと思われます。

判例は、「住宅地において犬を飼育する飼主は、犬の管理者として、犬の鳴き声が近隣住民に迷惑を及ぼさないよう、日常生活において犬をしつけ、場合によっては専門会に依頼するなどして犬を調教するなどの飼育上の注意義務を負う」と述べています。そして、原告の医療費及び通院交通費として約5万円、慰謝料25万円、録音機器等購入費用として約5万円、弁護士費用3万円を損害賠償として認めました。

犬好きの私としては、法律論のそれはそれとして、相隣関係の渦中に置かれてしまった犬が気の毒に思えました。この犬は訴訟継続中に死亡したらしく、「本件犬は、平成25年3月5日、死亡した」という文章に切なくなりました。

本件が実際にどのような事案であったのかは分かりませんが、同種事案は、犬の鳴き声を端緒に近所の人間関係がこじれてしまった場合が多いと思います。犬を飼育する以上は、周囲も、犬自身もストレスなく生活するために、しつけを施すことは飼主の責務というべきでしょう。