子どもの問題に関連して、最近、養子縁組に関する記事をよく見かけます。例えば、今週のAERA(朝日新聞出版)には「育ての親が不足 養子を選択肢に」というタイトルで、「特別養子縁組」の記事が掲載されていました。
特別養子縁組(民法817条の2~11)が、通常の養子縁組と異なるのは、実父母との親族関係が終了すること(民法817条の9)です。戸籍にも、「養子」「養女」ではなく、「長男」「長女」などと記載されます。
特別養子縁組は、欧米諸国の養子制度(完全養子・・実父母との親族関係が消滅)の影響を受け、昭和62年9月に成立した民法等の一部改正法により創設された制度です。
特別養子縁組は、養親となる者の請求に基づき、家庭裁判所の審判によって成立します(民法817条の2)。その要件は以下のとおりです。
1.養親は配偶者のある者で、夫婦ともに養親となること。ただし、夫婦の一方が子の実親であれば、当該親は養親になる必要はありません(民法817条の3)。
2.養親は25歳以上であること。ただし、夫婦の一方が25歳以上の場合には、他方は20歳以上であれば要件を充たします(民法817条の4)。
3.養子となる子が特別養子縁組の請求時に6歳未満であること。ただし、養子となる子が8歳未満であって、6歳未満の時から養親となる者に監護されていれば要件を充たします(民法817条の5)。
4.養子となる子の実父母の同意があること。ただし、実父母が意思表示できない場合や、父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる子の利益を著しく害する事由がある場合は除かれます(民法817条の6)。
5.実父母による子の監護が著しく困難又は不適当であること、その他子の利益のため特に必要があると認められること(民法817条の7)。
6.養親となる者が、養子となる子を6か月以上の期間、監護すること(民法817条の8)。
特別養子縁組の成立に関する最近の判例(大阪高等裁判所平成27年9月17日)が、判例タイムズ1423号189頁に掲載されていますので紹介します。これは、原審では、特別養子縁組の請求が却下され、養親になる者が不服申立をしたところ、抗告審においては、「子の利益のため特に必要がある」(民法817条の7)と判断され、特別養子縁組が認められた事案です。
【事案】
・ 夫婦であるAとBが、Cを特別養子とすることを求めた。
・ Cの実母Dは未成年者(17歳でCを出産)。Dは交際中であったCの父Fと別れている。CはFから認知を受けていない。
・ Bは、Dの母Eと従姉妹の関係にある。
・ Aらは、Cが産院を退院した直後から監護を行っている(DはCを出産後、一度もCと会っていない)。
・ DとEは特別養子縁組に同意している(両名とも経済的余裕がなく、Cを養育できない状況にある)。
・ 原審は、CとDとの間の身分関係の存続が、Cの養育監護にとって障害になるものではないので、民法817条の7が定める要件に欠けるとして、AとBの申立を却下した。
【抗告審(大阪高等裁判所)の判断】
DがCを監護することは著しく困難であるのに対し、AとBは養親としての適格性があり、Cとの適合性にも問題がない。Cを、AとBの特別養子とすることは、民法817条の7の「子の利益のために特に必要がある」と認めるのが相当である。
文字面だけを見れば、事実の経過でしかありません。ですが、その背景には、実母や養父母の相当の覚悟があるはずです。当事者が子どものためにと思ってした決断であれば、裁判所もそれを重く受け止めて判断すべきだと思います。
日本では養子縁組自体がまだ一般的とはいえませんが、家族のあり方も多様化し、子どもの保護に目が向くにつれ、養子縁組をめぐる状況は以外に早い段階で変化が生じていくかもしれません。