別居親に親権を認めた判決について

先月29日、千葉家庭裁判所松戸支部で、約5年間、子(8歳)と別居していた父親(被告)を親権者に指定する離婚判決がありました。

被告代理人は会見で、「フレンドリーペアレントルール(寛容性の原則)を採用した画期的な判決」と語っており、反響の大きい判決だったと思います。

この事案では、同居親である母親が月に1回、約2時間の面会を主張したのに対し、別居親である父親は、年間約100日の面会を認める計画書を提出していました。

新聞記事でこの判決を知ったとき、面会の実効性はどのように確保されるのだろうかと思ったのですが、他方、裁判所がこのような判断をしたからには、おそらくは父親が提出した計画書には、アメリカなどで見かけられるような、親教育プログラムを受講したとか、精神科医や心理学者による鑑定書(親として適正があることを証明する内容)など、当事者以外の第三者、特に専門家によって親としての資質を保証する証拠が提出されていたのではないかと推測しました。

ただ、判決書を実際に見ておらず、よく分からないままだったのですが、本日、「共同親権ネットワーク」というウェブサイトに、判決書全文が掲載されていることを知り、興味深く拝見しました。離婚判決に先立つ監護者指定の審判においては、母親が監護者として指定されているのですが、それを覆した判決だったことも分かりました。

父親側が提示した面会交流の方法は、金曜日から日曜日にかけて非監護親宅で過ごす事を認めるであるとか、長期休暇中に1週間の面会交流を認めるなど、諸外国の基準に近い詳細なものでした。また、「共同養育計画案」として16条に及ぶ具体的な取り決めが提示されていました。これも、諸外国の取扱いに準じたものだと思います。

当事者の方が国際機関で働いていた経験を有していることから、このような面会交流方法や計画案が出てきたのであろうと納得しました。

私が推測した親教育プログラムもありましたが、父親が受講済みというのではなく、父親が母親に対して、今後の受講を義務付ける内容が計画案に含まれているというものでした。

判決を読んで、父親側の書証には説得力があったであろうと感じると同時に、母親が面会交流を拒んでいたかについての記述がなく、その事情も知りたいと思いました。

私も面会交流は行われるべきだと考えていますが、いわゆる面会交流の原則的実施論を批判する考え方(参考:判例時報2260号・3頁「子ども中心の面会交流論(原則的実施論批判)」)にも、一理あると思うからです。

また、諸外国とは裁判所の権限も異なりますから、計画案の実効性はどのように担保されるのかも気になりました。

いずれにしても、今後は、諸外国の運用を意識していく必要があると思います。親教育プログラムの受講実績や精神鑑定は、日本においても、これから証拠として普及する可能性があるでしょう。何となくというのではなく、監護親、非監護親、どちらの側の代理人になっても、依頼者の主張を理論的に裏付けていく必要があります。

この事案について、控訴審ではどのような判断がなされるのかを注目しています。