「内縁」は、日常的にも使われている言葉ですが、法律上、「内縁」というのは、婚姻の意思をもって夫婦共同生活を営み、社会的にも夫婦として認められているけれども、婚姻の届出をしていないために、法律上は夫婦として認められない関係をいいます。このように、内縁関係として、一定の法的保護を受けるためには、「婚姻の意思」と「夫婦共同生活」が必要となります。
上記要件を充たす内縁については、法律上の夫婦に準じ、同居協力扶助義務、貞操義務、婚姻費用分担義務、財産分与が認められますが、相続権は認められません。また、特別法上は、厚生年金保険の遺族年金 健康保険の各種給付、労働者災害補償保険の遺族補償手当の受給権などについて、法律上の配偶者と同じ扱いを受けています。
事実上の婚姻関係にある内縁の当事者を保護する必要性がある一方で、民法が法律婚主義であることとのバランスを図るため、全てが法律婚と同様にいかない訳です。
最近の判例雑誌に、内縁の夫が交通事故により死亡したケースについて、その内縁の妻が事故加害者に対し、扶養請求権侵害に基づく損害賠償請求と慰謝料を請求し、それらが認められた裁判例が掲載されていました(東京地判例H27.5.19、判例時報No.2273・94頁)。
具体的には、被害者と内縁関係にあり、その扶養を受けていた内縁の妻について、月額6万円の扶養を受けていたと算定し、被害者の平均余命の2分の1(10年間)の期間について損害賠償を認めています。また、この裁判例では、民法711条の類推適用により(配偶者に準じるものとして)、慰謝料として500万円を認めました。
内縁関係において、将来の扶養利益の喪失に基づく損害賠償請求権があることは、最高裁のH5.4.6判決で示されており(内縁の配偶者が自動車損害賠償保障法72条1項の「被害者」に該当すると判断されました)、解決済みの問題ではありますが、それほど事例は多くないと思いますので、内縁関係の認定や賠償額の判断基準などが参考になります。