本年4月に創刊された「家庭の法と裁判 No.3」という雑誌が事務所に届きました。その家事関係裁判例の中に、婚姻費用に関する判例が複数掲載されていました。
婚姻費用の審判後、「事情の変更」があった場合、それを理由とする審判の変更が認められます。しかし、婚姻費用は、そもそも継続的な金銭給付を前提としていますから、当事者の収入や生活状況に何らかの変化が生じることが予測されます。しかし、何らかの変化が生じる度に審判内容を変更することになれば、かえって当事者の生活を不安定にします。そこで、どのような基準を充たせば、前審判を変更すべき「事情の変更」といえるかどうかが問題になります。
基本的に、「事情の変更」は厳格に解釈されており、掲載されていた判例(東京高決H26.11.26)でも、「その審判が確定した当時には予測できなかった後発的な事情の発生により、その審判の内容をそのまま維持させることが一方の当事者に著しく酷であって、客観的に当事者の衡平を害する結果になると認められるような例外的な場合に限って許されるというべき」と基準を示し、義務者の収入が約12.5%しても大幅な減少とは認められないとしています。
他方、別の掲載判例(大阪家審H26.7.18)では、前審判後に義務者が婚外子を認知し、失職した事案について、義務者の年齢(48歳)や直近の就労形態(契約社員)、従前の職歴等に照らすと、義務者が前審判当時と同程度の収入を得られる可能性は大きくはないとして、「相当程度の事情の変更があったと認められ、婚姻費用減額の必要性がある」と判断しました。
予測できなかった事情は、ケース毎に個別具体的に判断されますので、上記判例はいずれも一事例として参考になりました。