相続〜預貯金の引出しが伴う場合

被相続人の通帳を確認したところ、生前に多額の預貯金が出金されていることが判明したとします。このようなケースでは、相続人間において、それらが被相続人自身の意思で行われた出金なのか、一部の相続人が被相続人に無断で権限なく行ったものなのか、という争いになることがあります。

具体的には、預貯金を出金した相続人を被告とし、他の相続人が原告となって、「不法行為に基づく損害賠償請求」や「不当利得返還請求」をします。

そのような事例について、名古屋地方裁判所の裁判官が、1)法律上の問題点、2)事実認定上の問題点、3)審理上の工夫例をまとめた論稿が判例タイムズNo.1414に掲載されており、大変参考になります。

特に、事実認定上の問題点は、引出行為をしたのは誰か、引出し権限の存否(被相続人の意思能力、授権・承諾の有無や内容、あるいは贈与であったのか)、払戻金の使途(葬儀費用や生活費をどう考えるか等)について、詳細に分類したうえ、主張立証上の位置付けや、過去の判例がいかなる証拠からどのような事実を認定したかが解説されています。

また、裁判を効率的に進める工夫として、預貯金の引出日、出金額、当事者の主張・反論、書証などを表にした一覧表が紹介されていましたが、これは、弁護士にとっても、事案整理のため有用だと思います。