今日の日本経済新聞朝刊に、ペット保険に関する記事が掲載されていました。ペットを家族同様に大事にする飼い主が増えるとともに、医療費の負担が大きくなったことを背景に、保険料収入が2割強伸びたそうです。
飼い主にとっては大切な存在であるペットですが、法津的には、動物は「物」(民法86条)として位置付けられます。
例えば、ペットにケガを負わせた場合には、傷害罪ではなく、器物損壊罪です。交通事故等で、ペットが死亡した場合には、人間のように逸失利益は認められず、「時価相当額」が損害額ということになりますし、飼い主の慰謝料は数万円程度です。
もっとも、名古屋高等裁判所の平成20年9月30日判決のような裁判例もあります。これは、追突事故により、自動車に乗せていた飼い犬(ラブラドールレトリバー種)が腰椎を圧迫骨折し、治療後も後肢麻痺、排尿障害の症状が残った案件だったのですが、治療関係費については、時価相当額を念頭にしつつ、社会通念上相当と認められる限度(13万6500円)で損害とし、慰謝料については、「近時、犬などの愛玩動物は、飼い主との間の交流を通じて、家族の一員であるかのように、飼い主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくない」「飼い主には、財産的損害の賠償によっては慰謝されることのできない精神的苦痛がある」と述べ、子供同然に思って愛情を注ぎ育てきた飼い主夫妻が多大な精神的ショックを受けたこと、手厚い介護を行ってきたこと、加害者が謝罪をしていないことを考慮して、夫妻それぞれにつき20万円の慰謝料を認めました(この裁判例では、犬用シートベルトを装着させていなかったことについて、飼い主夫妻に1割の過失相殺が認められています。ペットとドライブする際には、ペットの安全対策も忘れずに!)
昨年12月の雑誌「AERA」(朝日新聞出版)では、離婚時のペットの「親権」が取り上げられていました。もちろん、動物の場合、「親権」という概念はありませんので、法律的には、「財産」として財産分与の対象となり、どちらがペットを取得するかという問題となります。
また、自分のペットが他人にケガを負わせれば、飼い主は、「相当の注意」をもって管理していない限り、動物の占有者として損害賠償責任を負います(民法718条)。相当な注意をもって管理していたかどうかは、動物の種類や性質、飼い主の行為時の対応や、被害者側の事情などが考慮されますが、「相当な注意をしていた」と認めてもらうのは、かなり難しいというのが実情です。
少し前になりますが、有名な俳優さんがマンションで犬を飼育しており、その犬に噛まれた住民の方がマンションを退去された案件について、不動産管理会社の飼い主に対する損害賠償(賃料相当損害金など)が認められた、という裁判もありました。
このように、ペットをめぐる法律関係も様々です。子供の数よりもペットの数の方が多いという時代ですから、今後も事例が増えていくだろうと思います。