訴訟費用とは

新しい判例時報(No.2257・27頁)に、証人尋問のために裁判所に出頭するにあたり、証人2名が航空機のビジネスクラスを利用してドイツ・ポーランドと日本とを往復した場合、その運賃額(1名につき60万円余、もう1名につき56万円余)を「訴訟費用」として認めた事案が掲載されていました。

「訴訟費用」とは,訴状などに収入印紙を貼付して支払われる手数料のほか,書類を送るための郵便料、出廷のための旅費・日当及び宿泊料、翻訳料、書類の作成・提出費用等が含まれます。なお、弁護士費用は訴訟費用には含まれません。

「訴訟費用」の範囲や金額は、「民事訴訟費用等に関する法律」「民事訴訟費用等に関する規則」に定められています。例えば、当事者の出廷日当は、その人の住所を管轄する簡易裁判所と出頭した裁判所が同じ簡易裁判所である場合は1回3,950円です。書類の作成・提出費用は、書類の合計通数が5通以内なら1,500円、それ以上は15通ごとに1,000円追加となります。本事案で問題になった日本と外国との間の旅費は、現に支払った旅客運賃により算定するという基準を参酌しつつ、裁判所が相当と認める額になります。

民事裁判の判決書には、訴訟費用をどちらがどの割合で負担するのかが定められています。基本的には、敗訴した側が訴訟費用を負担しますので、原告の請求が全て認められたのであれば、「訴訟費用は被告の負担とする」と定められますし、原告の請求が棄却されたのであれば、「訴訟費用は原告の負担とする」となります。原告の請求が一部認められたのであれば、その認められた割合に応じて、原告と被告が負担を分担することになります。

このように、判決書は負担割合だけを決め、その額を定めていません(民事訴訟法67条)。そこで、相手方から訴訟費用を取り立てる場合には、裁判とは別に「訴訟費用額確定処分」の申立てが必要となります。具体的には、判決が確定した後に、第一審の裁判所に申立書を提出するのです。なお、訴訟費用額の確定は裁判所書記官の権限です(民事訴訟法71条)。

上記事案は、この「訴訟費用額確定処分」が行われ,ビジネスクラスの運賃額が「訴訟費用」として相当かどうかが争われたものですが、裁判所は、証人の地位・役職を一要素として考慮し、また、航空機による移動距離・移動時間からくる負担を勘案して、ビジネスクラスを利用することが不当とはいえないものとして、現に支払った旅客運賃たるビジネスクラスの運賃額について、「訴訟費用」として相当と判断したものです。