氏の変更と名の変更

「家庭の法と裁判」という日本加除出版の季刊誌に、氏の変更と名の変更の申立てに関する記事が掲載されていました(2号・118頁)。

それほど多くはありませんが、時折、戸籍上の名字(氏)や名前(名)について、変更が可能かどうかの相談を受けます。氏の変更は、戸籍法107条1項に、名の変更は戸籍法107条の2に規定されています。

いずれも家庭裁判所の許可が必要なのですが、氏の変更には「やむを得ない事由」(氏の変更をしないと、その人の社会生活において著しい支障を来す場合であって、社会的、客観的にも相当であることが必要と解されています。)、名の変更には「正当な事由」が必要です。
氏の変更は、名の変更よりも厳しい要件となります。

名の変更における「正当な事由」の判断にあたっては、ア)営業上の目的から襲名する必要がある、イ)同姓同名の者があって、社会生活上甚だしく支障がある、ウ)神官・僧侶となった、あるいはそれらをやめて改名する必要がある、エ)珍奇な名、外国人にまぎらわしい名又は甚だしく難解、難読な文を用いた名等で社会生活上甚だしく支障がある、オ)帰化した者で日本風の名に改める必要がある、といった事実が参酌されます(昭和23年1月31日民事甲第37号民事部長回答より)。

もっとも、実際には、「通称として使用している名を戸籍上も改めたい」というご相談が多いと思います。「正当な事由」というからには、ハードルは高く、戸籍上の名ではない名を使用するに至った経緯、通称使用している期間、永年の通称使用を証明する資料により、変更の可否が判断されます。私が取り扱った案件でも、例えば、小学校就学前のお子さんについて、約3年の通称使用について、保育園関係の書類、親戚・知人からの郵便物、習い事関係の書類、その他メンバーズカードなどを提出して、そのお子さんが、社会的には、通称使用している名で広く認知されていることを証明しました。