ここ数年来、中小企業の事業承継が問題になっています。
平成20年5月に、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が成立し、同法は、遺留分について民法の特則を定めています。
70代の方で、中小企業の代表者として第一線で働いている方がいらっしゃいます。そのこと自体はよいのですが、中には、後継者不足で悩んでいらっしゃったり、会社経営に関与していない親族に株式が分散されているため、上手く事業承継ができないことが原因であったりするケースもあります。
最近の判例雑誌に、遺産である同族会社の株式について、共同相続人の分割取得とした原審判を変更し、同族会社の事業を承継予定の相続人の単独取得とした平成26年3月20日の東京高裁の決定が掲載されています(判例時報No.2244、家庭の法と裁判No.1)。
東京高裁は、「典型的な同族会社であり、その経営規模からすれば、経営の安定のためには、株主の分散を避ける事が望ましい」「そのような事情は、民法906条所定の『遺産に属する物又は権利の種類及び性質』『その他の一切の事情』に当たるというべき」と述べ、事業の承継予定者に全ての株式を取得させ、同人に対して他の相続人に代償金を支払うよう命じました。
愛知県にも優れた技術を持つ中小企業が多くあります。次世代にそれを受け継がせるためには、企業の経営を安定させることが重要です。この決定は、今後ますます増えるであろう同種の事例を解決するために参考になると思います。
民法906条:遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。