弁護士のメンタルヘルス

弁護士の業界でも、メンタルヘルスが問題になっています。

日本弁護士連合会が発行している「自由と正義」の2012年8月号では、弁護士のメンタルヘルスが特集されています。また、弁護士会によっては、会員向けのメンタルヘルスケアを始めているところもあります。

弁護士は、人間同士の紛争に直面する仕事です。時には、他人から心ない言葉を向けられたり、理不尽な対応を受けたりすることがあります。また、対依頼者、対相手方、対裁判所との間のやり取りに空しさを感じることもあります。心の平静を保つためには、対象から距離を置いて、良い意味で「鈍感」になることも必要です。

弁護士が仕事の負担やストレスを一人で抱え込んでしまった場合、精神のバランスが崩れ、さらに仕事が回せなくなって、余計に追いつめられてしまうのだと思います。

運動をしたり、趣味に打ち込んだりして、ストレスを解消できるのが理想ということは、誰でも頭の中では分かっているはずです。ですが、心身の不調に気付いたとしても、時間的にも、気持ちの面でも、休むことができず、病院やカウンセリングに行く余裕もない、というのが弁護士の現実だと思います。

昔、私自身も、仕事の量・質ともに負荷が大きく、仕事しかしていない状態になった時期がありました。仕事を離れた自分がどんな人間だったのか、何が好きだったのかもよく分からなくなり、行き詰まっていました。

そんなとき、平日に休みをとって、何をするということもなく街を散歩しました。

平日の昼間に住宅街にいると、自分とは全く違うペースで、別の尺度で,違う心持ちで生活している人をたくさん見かけました。当たり前のことですが、自分の目の前にある世界が全てではなかったことに気がつき、救われました。また、街中で咲いている美しい花が目に入りました。それまで、花があることにすら気づいていなかった自分を知りました。自分を客観視して、リセットできたような気がしました。

全ての弁護士に周囲に相談できる上司や同僚がいるとは限らず、諸々を一人で抱え込んで追いつめられている弁護士も少なくないと思います。弁護士会として、メンタルヘルスの問題を積極的に取り上げることは、解決の糸口になるかも知れません。