今日は、鹿児島地裁平成26年3月12日判決(判例時報No.2227号)の紹介です。
精神疾患をかかえる市立中学校の女性教員に対する、校長、教頭、県教育委員会、教育センターの指導官のパワーハラスメントにより、女性教員の精神疾患を憎悪させ自殺を選択させたとして、市及び県の国家賠償責任が認められた事案です。
この裁判例では、校長が女性教員に対して行った指導については、「合理的なものでない態様でなされたと認めるに足りる的確な証拠はない」と判断されました。
しかし、裁判所は、女性教員の業務内容や、指導力不足と認定された教員に行われる指導力向上特別研修を受講させられたこと、同研修において退職を促しているとも受け取れる指導を受けたことは、精神疾患を有していた女性教員にとって心理的負荷が極めて大きいものであったと認定しました。
そして、被告らの行為は、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積し、労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務(安全配慮義務)に違反し、女性教員の精神疾患を憎悪させる危険性の高い行為であったとして、自殺との因果関係を認めました。
もっとも、損害賠償額については、女性教員の精神疾患等を考慮して素因減額3割、女性教員が校長から病気休暇の延長を勧められたが断ったこと等を考慮して過失相殺2割、の合計5割が控除されています。