パワーハラスメント(2)

昨日ご紹介した判例時報No.2241に、過去の判例時報に掲載された最近のパワーハラスメントの裁判例が2つ引用されていましたので、その2つの判例について、今日と明日とで紹介したいと思います。

まず、1つめは、名古屋地裁平成26年1月15日判決(判例時報No.2216号)です。
会社役員からパワーハラスメントを受けた従業員が自殺した事故につき、従業員の遺族が、役員及び会社に損害賠償を請求した事案です。

裁判所は、一部の会社役員が、従業員が仕事でミスをしたときに、「てめえ、何やってんだ」「ばかやろう」という汚い言葉で大声で怒鳴ったことや(暴言)、頭を叩く、殴る、蹴るといった行為(暴行)があったこと、「会社を辞めたければ7000万円払え。払わないと辞めさせない」と言ったこと(退職強要)を認定し、これらは「仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、被災者を威迫し、激しい不安に陥れるものと認められ、不法行為に当たると評価するのが相当」と判断しました。

そして、上記の不法行為と従業員の死亡との関係については、「短期間のうちに行われた本件暴行及び本件退職強要が被災者に与えた心理的負荷の程度は、総合的に見て過重で強いもの」であるとし、急性ストレス反応により自殺するに至ったとして、因果関係を認めました。

パワーハラスメントを判断する際には、社会的見地から相当なのか、不相当なのかが問題となります。パワハラ、セクハラ、マタハラ、モラハラ、といったハラスメントに共通することですが、受け手の名誉感情を害し、屈辱感や威圧感を与えるような言動は、受け手に大きな心理的負荷を与えます。そのような行為が繰り返された場合、不相当という評価を受けるように思います。