最新の判例タイムズ(No.1406)に、成年後見人の職務に関する論文が掲載されていました(成年後見人の職務権限に関する研究[家事法研究会])。いずれの論文も、成年後見人の財産管理権の内容や代理権の限界、行為基準等について、具体的な事例などもふまえて解説されており、参考になりました。
例えば、東京大学の道垣内弘人教授の論文(成年後見人等の財産に関する権限と限界)には、意思能力を失っている被後見人が、これまで毎年、お孫さんにお年玉をあげていた場合に、後見人がそれを継続することは可能であるかという問題が提起されていました。これに対しては、既に意思能力を失っている限り、お年玉をもらったお孫さんが喜んだとしても、もはや本人の福祉に適合するものでないという考えがある反面、ご本人の生活の一貫性に配慮し、ご本人ならどのように判断しただろうかと推測を含めて考えた場合、お年玉を与えることは「本人の意思の尊重」におそらく適合する、と述べられていました。
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法858条)。後見人として、広範な権限と大きな裁量をどのように行使すべきかを判断する際には、やはり「本人の意思の尊重」という視点が重要であると思います。