判例雑誌の最新号に、面会交流の間接強制に関する裁判例(東京高決平成26年3月13日)が掲載されていました。
子を監護している親が、調停や審判で定められた面会交流を履行しなかった場合、非監護親は、「間接強制」という強制執行を裁判所に申し立てることができます。
「強制執行」とは、調停や審判等で定められた義務を守らない義務者に対し、執行裁判所又は執行官が国家権力を用いて、その義務内容を強制的に実現することです。「間接強制」とは、強制執行の一つの方法であり、義務者に対し、義務を守らなければ金銭を支払わせることを決定し、義務者に心理的圧迫を加えるものです。
もっとも、強制執行するためには、調停や審判等に定められた義務内容が特定(一義的かつ明確であること)していることが必要です。この点については、平成25年3月28日、最高裁判所が、「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の内容の特定に欠けることがないといえる場合」という判断基準を示しています。例えば、調停で「月に1回程度、面会交流することを認める。具体的な日時、方法等は当事者双方が子の福祉に配慮して定める」とした場合、義務内容を特定していませんので、間接強制を申し立てることはできません。
冒頭の裁判例は、元夫(非監護親)が、審判で定められた面会交流を履行しなかった元妻(監護親)に対し、間接強制(1回の不履行につき25万円)を申し立てた事案です。「面会交流の日時(毎偶数月の第1日曜日)」「面会交流の頻度(2か月に1回)」「面会交流時間の長さ(2時間)」は審判で明示されていたものの、「子の引渡方法」が具体的に明示されていなかったため、義務内容が特定しているかどうかが争点になりました。
原審のさいたま家庭裁判所は、「審判は義務内容を十分に特定していない」として、元夫の申立てを却下しましたが、東京高等裁判所は、「審判は、当事者間において、監護親がFPICの職員に子を引き渡すという黙示の合意があったことを前提にしており、実質的には、子の引渡方法についても具体的な定めがなされたといえるので、義務内容の特定に欠けることはない」として、1回の不履行につき2万円の間接強制を認めました。