裁判の手続きを進行させるためには、当事者が、他方当事者が裁判所に提出した書類や、裁判所が作成した判決書等の書類を受け取ることが必要になります。
例えば、原告が提出した「訴状」は、「特別送達」という特別な郵便で被告に送付されます。これは、郵便職員が、原則として本人(あるいは家族等の同居人や、会社の場合は事務職員等)に郵便物を手渡しするというものです。郵便職員は、郵便物を受け取った人に署名押印をしてもらい、受領日時と受領者を裁判所に報告します。
もし、郵便物を受け取るべき本人や家族等の同居人も不在である場合、不在連絡票を置いて、一定期間は郵便局で保管しますが、その期間内に誰も受け取らないと、「訴状」は裁判所に戻されてしまいます。
被告の勤務先がわかれば、そこに訴状を届けてもらうことができます(民事訴訟法103条2項)。ですが、勤務先も分からず、被告が訴状に記載した住所に住んでいるのに訴状を受け取らない場合、裁判手続きを進めることができません。
そこで、そのような場合には「付郵便送達」(民事訴訟法107条)という方法がとられます。これは、裁判所が、被告宛に訴状等を書留郵便で発送することで、被告に届いたとみなすというものです。
裁判所に「付郵便送達」をしてもらうためには、原告において、訴状に記載した住所に被告が住んでいることを調査し、裁判所に報告書を提出する必要があります。調査にあたっては、被告の住所地に行って、電気やガスのメーターが回っているか、ベランダに洗濯物が干してあるか、郵便受けに郵便物がたまっているか等を確認し、近隣住民からも聞き取りをして、被告が確実に住んでいることを、裁判所に納得してもらう必要があります。