戸籍がない状態(無戸籍)の方を把握し、戸籍取得に向けて支援する取り組みが法務省で進んでいます。
昨日、神戸家庭裁判所で、32年間戸籍のない状態であった女性が、母親の前夫との親子関係がないことを確認する判決を受けたというニュースもありました。
無戸籍が生じる原因の一つが、民法772条の「嫡出推定」という制度です。前夫との離婚後300日以内に出生した子は、血のつながりにかかわらず前夫の子と推定され、出生届を提出すると前夫の戸籍に入ります。そのため、家庭内暴力により元夫から逃げている場合などでは、子が前夫の戸籍に入る事態を避けるため、母親が出生届を出さないということが生じるのです。この「嫡出推定」を覆すには、「嫡出否認」や「親子関係不存在」という法的手続きをとる必要があります。
以前、外国籍の女性が、前夫との離婚後300日以内に、別の男性(現在の夫)の子を出産したというケースを取り扱いました。子には前夫の嫡出推定が及んでいますので、子の父親は、子を認知することができませんでした。また、日本で出生届を出さなかったため、子は日本国籍を失ってしまった状態にもありました。このときも、やはり「親子関係不存在」の法的手続きをとりました。その結果、子の父親は子を認知することができ、子は日本国籍を取得することができました。