相続法改正の中間試案(原案)~その4~

相続法改正の中間試案について、7月12日にパブリックコメントが開始されました。
本日は、遺言制度に関する改正提案について記載します。

まず、「自筆証書遺言の方式緩和」です。これは、現行法上の自筆証書遺言には厳格な方式が定められており、公証人等の専門家の関与が必要とされていないため方式違反で無効となるリスクが高い、全文を自署する負担が大きい(特に高齢者にとって)という問題点があり、それが自筆証書遺言の利用を妨げているのではないか、という問題意識からの改正提案です。

具体的な改正提案は以下のとおりです。
1)遺贈等の対象となる財産の特定に関する事項(不動産の表示、預貯金の表示等)については自署を要求しない。その場合は、当該事項が記載された全ての頁に署名し、押印をする。
・・・ 現行法では、全文、日付及び氏名の自署と押印が要求されています(民法968条1項)。改正提案により、財産目録部分は自署する必要がなくなります。
2)加除訂正については、署名のみで足りる。
・・・ 現行法では、署名及び押印が要求されています(民法968条2項)。

方式を緩和することによる負担の軽減と偽造及び変造のリスクとのバランスが議論になっています。

また、「自筆証書遺言の保管制度の創設」も提案されています。
現行法上、自筆証書遺言を確実に保管し、相続人がその存在を把握することのできる仕組みが確立されていないという問題意識によるものです。

具体的な改正提案は以下のとおりです。
自筆証書遺言を作成した者が一定の公的機関(全国に所在する機関が想定されている。)に遺言書の原本(画像データを別個保管することが想定されている。)の保管を委ねることができる制度を創設する。同制度に基づき保管された遺言書については検認を要しない。

しかしながら、公的機関がどこであるかについては、法務局、役所、公証役場などが例示されていましたが、今後の検討課題とされています。

その他には、「遺言執行者の権限の明確化等」もあります。
現行法上、遺言執行者の権限の範囲が必ずしも明らかではなく、遺言内容は多岐にわたることから、遺言執行者の権限の内容についても遺言事項に関する類型毎に明示する必要があると考えられたことによります。
そこで、改正提案は、以下のように、遺言執行者の一般的な権限と個別の権限を定めています。また、遺言で遺言執行者が指定される場合、十分な法律知識を有していない者が指定される場合も多いことから、現行法上の遺言執行者の復任権の要件(民法1016条)を緩和しています。

【遺言執行者の一般的な権限等】
1)遺言執行者は,遺言の内容を実現することを職務とし,遺言の執行の妨害の排除その他遺言の執行に必要な 一切の行為をする権限を有するものとする。
2)遺言執行者の行為の効果は相続人に帰属するものとする。
3)遺言執行者が就職を承諾し,又は家庭裁判所に選任されたときは,その遺言執行者は,遅滞なくその旨及び遺言の内容を相続人に通知しなければならないものとする。

【遺言執行者の個別的な権限】
ア 特定遺贈がされた場合
1)特定遺贈がされた場合において,遺言執行者があるときは,遺言執行者が遺贈義務者となるものとする。
2)1)の規律は,遺言において別段の定めがされている場合には適用しないものとする。
イ 遺産分割方法の指定がされた場合
1)遺言者が遺産分割方法の指定により遺産に属する特定の財産(動産,不動産,債権等)を特定の相続人に取得させる旨の遺言をした場合において,遺言執行者があるときは,遺言執行者は,その相続人(以下「受益相続人」という)が対抗要件を備えるために必要な行為をする権限を有するものとする。
2)1)の財産が特定物である場合においても,遺言執行者は,受益相続人に対してその特定物を引き渡す権限を有しないものとする。ただし,その特定物の引渡しが対抗要件となる場合は,1)の規律を適用するものとする。
3)1)の財産が預貯金債権である場合には,遺言執行者は,その預貯金債権を行使することができるものとする。
4)1)から3)までの規律は,遺言において別段の定めがされている場合には適用しないものとする。

【関連ひと言】
その6
その5
その3
その2
その1