相続法改正の中間試案(原案)〜その3〜

 相続法改正の中間試案では、遺産分割に関する見直しとして、昨日の「配偶者の相続分の見直し」以外に、「可分債権の遺産分割における取扱い」についても検討されています。

 現在、金銭債権等の可分債権(その性質上、分割可能な債権のことをいいます。e.g.預貯金)は、最高裁判所の判例上(最判昭和29年4月8日)、相続開始によって法律上当然に分割され、各相続人が相続分に応じて権利を承継するとされています。

 そこで、現行実務においても、可分債権は、原則として遺産分割の対象から除外されており、例外的に、相続人全員の合意がある場合に限り、遺産分割の対象として取り扱われています。

 しかし、この考え方によれば、例えば、遺産の全てあるいは大部分が可分債権である場合にも、可分債権について特別受益や寄与分を考慮することなく、形式的に法定相続分に従って分割承継されてしまう結果、相続人間の実質的公平を図ることができない、という問題点が指摘されています。

 また、可分債権は、遺産分割を行う際の調整手段としても有用である点から、遺産分割の対象に含めるべきであるという意見もあります。

 そこで、中間試案では、預貯金債権等の可分債権を遺産分割の対象に含めることが提案されています。もっとも、遺産分割前でも、各相続人が分割された債権を行使することができるとするのか、あるいは、遺産分割が終了するまでの間は、原則として(相続人全員の同意がない限り)債権を行使することができないとするかについて、議論が分かれている状況にあります。

 前者に対しては、多額の特別受益がある相続人が遺産分割前に可分債権の弁済を受け、その弁済受領額が当該相続人の具体的相続分を上回る場合、その相続人に金銭支払債務を負担させるという手当てはなされているが、それによっても、当該相続人の無資力の危険を他の共同相続人が負担することになってしまうと指摘されています。他方、後者に対しては、相続人が被相続人の未払の医療費や税金を支払う必要がある場合や、遺産の中から相続人の当面の生活費を支出する必要がある場合等に対応すべく、例外的に可分債権 (特に預金債権)の一部行使を認める制度を設けるべきではないかとの指摘がなされています。点として指摘されています。

 現在、預貯金が遺産分割の対象になるかどうかについて争われた案件が、最高裁大法廷に回付されています(平成28年10月に弁論が行われるとのことです)。相続法改正に先立ち、前記の最高裁判例(最判昭和29年4月8日)が変更される可能性があるため、注目されています。

 なお、可分債権といっても様々です。金額が明確な預貯金債権もあれば、その存否や金額が確定していない不法行為に基づく損害賠償請求権や不当利得請求権も可分債権です。そこで、上記規律が適用される「可分債権」の範囲をどこまでとするか,預貯金に限定するのかどうか、という点も議論になっています。

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