相続法改正の中間試案(原案)〜その2〜

 相続法改正の中間試案では、遺産分割に関する見直しも検討されています。そのうちの一つが、「配偶者の相続分の見直し」です。現在は2分の1とされている配偶者の相続分を引き上げようとするものです。

 被相続人の財産の形成又は維持に対する配偶者の寄与の程度は様々であるところ、現行制度では、配偶者の具体的な貢献の程度は寄与分の中で考慮され得るにすぎず、基本的には法定相続分によって形式的・画一的に遺産の分配が行われており、それでは実質的公平を欠くのではないかという問題意識によるものです。

 改正提案の内容は以下のとおりです。大きく分けて、(1)被相続人の財産が婚姻後に一定の割合以上増加した場合に、その割合に応じて配偶者の具体的相続分を増やす提案と、(2)婚姻成立後一定期間の経過により法定相続分の引き上げを認める提案がなされています。そして、(2)については、その夫婦(各配偶者)に法定相続分の選択を認める考え方と、一定期間の経過により当然に法定相続分が引き上げられるとする考え方に分かれています。

【甲案】
 次の計算式(a+b)により算出された額が、現行の配偶者の具体的相続分額を超える場合には、配偶者の申立てにより、配偶者の具体的相続分を算定する際にその超過額を加算することができるものとする。
(計算式)
a=(婚姻後増加額)×(法定相続分より高い割合)
b=(遺産分割の対象財産の総額-婚姻後増加額)×(法定相続分より低い割合)
婚姻後増加額= x-(y+z)
x= 被相続人が相続開始時に有していた純資産の額
y= 被相続人が婚姻時に有していた純資産の額
z= 被相続人が婚姻後に相続、遺贈又は贈与によって取得した財産の額
純資産の額=積極財産の額-消極財産の額

【乙−1案】
 民法第900条の規定にかかわらず、配偶者が相続人となる場合において、その婚姻成立の日から20年〔30年〕が経過した後に、その夫婦〔一方の配偶者〕が協議により配偶者〔他方の配偶者〕の法定相続分を引き上げる旨〔一方の配偶者が他方の配偶者の法定相続分を引き上げる旨〕を法定の方式により届け出たとき場合には、相続人の法定相続分は、次のとおり変更されるものとする。ただし、その婚姻が相続開始の時まで 継続していた場合に限るものとする。
ア 子及び配偶者が相続人であるときは,配偶者の相続分は3分の2とし、 子の相続分は3分の1とする。
イ 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは,配偶者の相続分は4分の3とし、直系尊属の相続分は4分の1とする。
ウ 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者の相続分は5分の4とし、兄弟姉妹の相続分は5分の1とする。

【乙−2案】
 民法第900条の規定にかかわらず、配偶者が相続人となる場合において、相続開始の時点で、その婚姻成立の日から20年〔30年〕が経過しているときは、相続人の法定相続分は、乙−1案のア〜ウのとおりとする。

 乙案のように法定相続分を変更した場合、遺留分や債務承継の割合にも影響を及ぼすことになります。また、乙−1案については届出をどうするのか、撤回ができるのか、乙−2案については、例えば長期間別居状態にある夫婦についても、法定相続分を自動的に引き上げてよいのかという指摘があります。他方、甲案については、果たして計算が可能なのかという問題があります。

 私が所属している愛知県弁護士会の委員会で議論をしたところ、そもそも相続分を変更するのではなく、日本では使い勝手が悪いとされている夫婦財産契約を制度変更することによって対処すべきではないかという指摘もありました。意見が分かれるところだと思います。

【関連ひと言】
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