相続法改正の中間試案(原案)〜その1〜

 以前にも記載しましたが、平成27年4月から法制審議会の民法(相続関係)部会において相続法改正が検討されています。今月中に中間試案の原案が取り纏められ、来月以降、原案に関するパブリックコメントが公示される見通しです。

 改正が検討されている項目のうち、今日は「配偶者の居住権を保護するための方策」について、簡単に整理してみようと思います。

「配偶者の居住権を保護するための方策」は、法制審議会の部会資料によりますと、以下のような問題意識から検討されているものです。

 配偶者の一方が死亡した場合、他方の配偶者、特にその方がご高齢である場合には、それまで居住してきた建物に引き続き居住することを希望するのが通常です。この点、亡くなった方と配偶者との間に、遺産分割が終了するまでの短期間、建物を無償で使用させる合意が成立していたと推認できるのなら、その配偶者は建物で生活することができます(最判平成8年12月17日)。しかし、場合によっては、そのように推認できないこともあります。

 また、配偶者の一方が死亡した後、他方の配偶者が、遺産分割協議後も長期間にわたって、その建物で生活することを希望する場合には、遺産分でその建物の所有権を取得するか、その建物の所有権を取得した他の相続人との間で賃貸借契約等を締結する方法があります。しかし、前者の場合は、居住建物の評価額が高額となりますので、配偶者は建物以外の遺産を取得することができず、今後の生活に不安を抱えることとなります。また、後者の場合には、賃貸借契約等が成立しない限り、居住権が確保されません。

そこで、配偶者に短期的な居住権と長期的な居住権を確保させるための方法が、それぞれ検討されているのです。改正提案の内容は以下のとおりです。

【短期居住権】
・ 相続開始の時に遺産に属する建物に無償で居住していた配偶者に対し、相続開始から遺産分割により当該建物の帰属が確定するまでの間、引き続きその建物を無償で使用することができる短期居住権(使用借権類似の法定債権)を認める。
・ 短期居住権の取得によって得た利益は、配偶者が遺産分割において取得すべき財産の額に算入しない。
・ 配偶者は、建物の使用について善管注意義務を負い、通常の必要費を負担する。
・ 配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に無償で居住していた場合において、配偶者以外の者が遺言(遺贈、遺産分割方法の指定)又は死因贈与により遺産に属する建物の所有権を取得したときは、配偶者は、相続開始の時から一定期間(例えば6か月間)は、無償でその建物を使用することができる。

【長期居住権】
・ 配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、遺言、死因贈与契約、遺産分割の協議又は審判により、終身又は一定期間、配偶者にその建物の使用を認めることを内容とする長期居住権(賃借権類似の法定債権)を新設する。
・ 配偶者が、長期居住権を取得した場合、配偶者は、その財産的価値に相当する金額を相続したものとして取り扱われる(財産的価値の具体的な評価方法については検討中)。
・ 配偶者は、建物の使用について善管注意義務を負い、必要費を負担する。
・ 配偶者は、長期居住権について登記したときは、長期居住権を第三者に対抗することができる(具体的な登記手続については検討中)。

【関連ひと言】
その6
その5
その4
その3
その2