パワーハラスメント(1)

判例時報No.2241に、最近のパワーハラスメントの裁判例が掲載されています。

上司による注意、指導に関する言動によりうつ病に罹患した原告が、上司、コンプライアンス室の室長及び会社に対して、損害賠償を請求した事案です。

この裁判例では、上司が原告に対し、「新入社員以下だ。もう任せられない。」「何で分からない。お前は馬鹿」との、又はこれに類する発言をしたことや、上司が原告の診断書を棚上げしたことについて、上司の不法行為責任を認めました。
上司は、「上司として正当な業務の範囲内にあり、社会通念上許容される業務上の指導の範囲を超えていない」と反論しましたが、裁判所は、上司の言動は、原告に屈辱を与え、心理的負担を過度に加える行為であって、原告の名誉感情をいたずらに害する行為として許容限度を超えると判断しました。また、診断書の棚上げに対しては、「部下である原告の心身に対する配慮を欠く言動」と評価しています。

また、コンプライアンス室の室長の対応については不法行為を認めませんでしたが、上司の使用者である会社に対しては使用者責任が認められています。

そして、原告の損害額として、治療関係費等(約750万円)、休業損害等(約362万円)、慰謝料(450万円)を認めました(ただし、素因減額4割)。

パワーハラスメントの判断基準はなかなか難しく、セクシュアルハラスメント(セクハラ)よりも裁判例がまだ集積されていません。ですので、判例雑誌に最近の裁判例が掲載されると参考になります。